五階建てだがエレベーターが設置されているのは、数年前に別のところに建てられたもの。賃貸住宅がエレベーターなしで将来に不安を残しているのとくらべると、隔世の感がある。また、住棟のアプローチは数段の階段とスロープが併設されている。しかし、スロープには手すりが用意されているのに、階段のほうは手すりがない。雪が降ったりしたら両方とも使えなくなってしまうだろう。もっと問題なのは、アプローチ廊下から住戸のポーチに近づくと仕上げがタイルに変わるが、そこに三センチほどの段差があること。設計者がどのように図面で指示したのか、施工者のミスなのかわからないが、現実には人をつまずかせるのにかっこうの仕上がりだ。さすがにまずいというのは、説明に当たるべく現場に派遣された公団の担当者もモノを見て気がついたようだが、公開が終わるまでの二週間、有効な対策はとられなかったようだ。もう一つ、どう考えてもわからないのは、玄関につけてあった水平手すり。下から六〇センチくらいの高さで水平につけてあるが、使い方が理解できない。かまちに座って靴を着脱したあとで、立ち上がるときに使うのだと説明されたが、そんな手すりはその目的にはまったく役に立たない。ちょっと想像すれば、おかしいことくらい気がつきそうなものだが、あまりにも無造作だ。室内でも、妙なことはいくつかある。たとえば浴室の入り口ドア幅は六五センチを確保しているのに、そこに入るために通らなければならない洗面所へのドア幅は、六〇センチもない。これを改造しなければ浴室にたどり着けない事態が起こるかも知れないわけだ。一階の浴室は原則として平らになっているが、上階では入り口に立ち上がりができていて、バリアフリー設計ではない。つくばという土地柄からいっても、退職後に官舎から住み替える公務員が購入する可能性は高いのだから、もうちょっと工夫して平らにして欲しかった。その後、ある研究者(建築は専門ではない)と話をしたら、彼は「住宅・都市整備公団は業者の言いなりだ」と憤慨した口調で文句をいった。私はその指摘の当否を判断する材料を持っていないが、少なくとも住まい手の意向を代弁して施工業者と交渉してくれない場面がままあることだけは、容易に想像できた。居住者の立場に寄り添う姿勢がなければ、ほんとうの意味でのバリアフリーは実現しないだろう。
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